本と映画と建売戸建

考える、ありふれた建売戸建にて。

『あるかしら書店』(本)

 ヨシタケシンスケさんの本は何冊か持っていて、絵本(orイラスト付きの本)なのに大人も楽しめるところが良いのだけれど、この本は特にそうだ。ストーリーはシンプルで、「こんな本あるかしら?」と尋ねてきたお客さんに、本屋の店主が次々と本を見つけ出してくれるという設定だ。ただ、その「内訳」がユニークなのである。たとえば、「本のつつみ方」とか「世界一周読書の旅」とか「水中図書館」とか。 

 ヨシタケシンスケさんは、会社勤めをしていた頃に、ストレス発散のために書いていた小さな「イラストメモ」が、たまたま出版社の人の目に留まって、絵本作家になった人なのだそうだ。だからイラスト自体はメモサイズで、それを引き伸ばして絵本にしてもらっているのだとか。色付けも不得手で、出版社に頼んでいるらしい。

 自分のために描いていたものばかりだからか、大人の心にもフィットする面白さがある。逆に、そういうものが子供にも人気があるということは、子供も大人が想像するほど「子供らしく」はないということだろう。そういえば、自分も子供の頃「こうすれば大人の気持ちにしっくりくるだろう」と予想して、行動していたこともあるような。

 「必ずヒットする本のつくりかたはあるかしら?」

 という問いかけにだけ、店主は首をふる。ああ、そうか。ヨシタケシンスケさん並の売れっ子作家でも、本をヒットさせたいと思っているし、そのために試行錯誤しているんだなあ・・・と妙に納得した。